ご挨拶

 山形県鶴岡市は東北の日本海側に位置する地方都市です。自然に囲まれ、東北の厳しい冬を越えることで農作物のみならず肉や魚も美味しく、また泉質豊かな温泉地が点在するなど、恵まれた地域資源に富んだ町です。藤沢周平や丸谷才一、夏目漱石を指導した高山樗牛らを輩出した文学の町でもあります。私個人としてはそんな郷土・鶴岡を誇らしく思います。

 しかし一方で、大きな県道や国道沿いには、飲食、ドラックストア、紳士服などのチェーン店が立ち並び、市内唯一の西海岸系のコーヒーチェーン店ができれば喜んでいくような、どこにでもある、よく見る一般的な地方都市でもあります。そんなよくある地方都市ですから、当然、人口減少、都市のドーナツ化という地方都市共通の悩みを抱えています。鶴岡市の場合、人々が中心市街地から郊外に流出するのは、道路幅が狭いうえ、冬は雪によってさらに道幅が狭くなり、生活道路としての機能が大幅に落ちることが大きな原因であるといえます。

 つるおかランド・バンクは、道幅が狭く住みにくい中心市街地を道路の拡幅など、車での往来を容易にすることで、住みたいと思える元気な街に変えていくことを目的として設立されました。その手法は今まで主流であった行政主導で費用が高額な区画整理ではなく、できる範囲で道幅拡幅を進め、連鎖させて一本の道路が使いやすくなることを目指す、いわば小規模連鎖型の区画再編です。一度でできる範囲は小さく、派手さもありません。問題の深刻さと比較すると、我々の活動は大河の一滴でしかないかもしれません。しかし、一滴が集まってはじめて、小さな川は大河となります。それはまさに我々の理念そのものです。そんな私たちの活動が、鶴岡市をより住みやすい街にすることに繋がり、ひいてはみなさまの活動の一助になればこれ以上の幸せはありません。

 関係者のみなさまには、私どもの活動に引き続きご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2023年月10月

つるおかランド・バンク 理事長 廣瀬 大治
(鈴木不動産株式会社 代表取締役)